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【異国での学びが与えた影響】 第2回: 「その一歩が、人生を変える」—19歳と31歳、2度の留学でたどりついた今の私 (錢瓊毓さん)

「留学」は人生の中で大きなアドベンチャーであり、日本では味わえない体験を通して、自分自身を深く見つめる絶好の機会です。留学中に気づく自身の変化、また留学を終え社会に出た時に「留学体験」が自分に何をもたらしたか?を実感する時が多々あります。

「異国で生活すること」「異国で学んだこと」が自分をどう変えたか?その後の人生にどう影響を与えているか?EDICMのOB/OGや知人が留学を振り返り、その体験が「現在の自分」をどう形作っているのか?

シリーズ第2回は、EDICMの知人で、アメリカのテキサス大学オースチン校に留学後、様々な経験を積まれてから、産婦人科医としてご活躍されている錢瓊毓(せんけいいく)さんをご紹介いたします。

遠回りのようで、すべてつながっていた 〜医師になるまでの私の軌跡〜

私にはこれまでに2度の留学経験があります。
1度目は19歳でアメリカ・テキサス州へ、2度目は31歳でオーストラリア・メルボルンへ。時期も目的も異なるこの2つの留学体験は、それぞれのタイミングで私の価値観や人生の方向性を大きく変えてくれました。

後の選択に大きな影響を与えたアメリカ留学

最初の留学は1995年、19歳のとき。テキサス大学オースチン校へ進学するためにアメリカへ渡りました。最初の2か月は語学学校で英語に慣れ、その後はテキサス州のコミュニティカレッジに1年、さらに大学へ編入して2年半、合計で約3年半をアメリカで過ごしました。

当時の私は「明確な将来像がある」というより、「とにかく海外で学びたい」「大学を卒業したい」という気持ちだけで渡米を決めました。けれど、アメリカでの生活は、思っていた以上に濃く、挑戦の連続でした。日常のささいなこと——飲み物を買う、バスに乗る、郵便を出す——そんな一つひとつの行動が「できた!」という達成感につながり、自信になっていきました。そして、多様なバックグラウンドを持つ学生たちと出会う中で、「何歳からでも学び直せる」「人生に正解はない」という価値観に触れたことは、後の選択に大きな影響を与えてくれました。


錢さんの母校 テキサス大学オースチン校


帰国後は就職と大学院への進学を経て医学の道へ

帰国後は外資系コンサルティング会社のアクセンチュアに就職。経営コンサルタントとして忙しい日々を送っていましたが、医療経営に興味があり、九州大学の大学院に進学したことで、人生が再び大きく動き始めます。

実は、「医学部へ行こう」と思い立ったのは、その大学院在学中のことでした。最初は、授業を通して出会った助産師さんたちの話に感動したのがきっかけです。 妊娠・出産についてのリアルな体験談を聞き、「妊娠出産って怖いと思っていたけれど、こんなに素敵なことなんだ」と感じたのです。そのうち、「私も何かこの分野でできることはないかな」と思うようになりました。でもその時点では、まさか医者になろうとは考えていませんでした。だって、時間もかかるし、大変そうじゃないですか。だから当時の私は、医師という選択肢は考えず、できる範囲で何か役に立てないかなぁ、と漠然と考えているだけでした。

そんなある日、知人の紹介でお会いした産婦人科医の方との何気ない会話で、ある感情が芽生えました。私の思い描いていた理想や夢が、まったく受け止められないような感覚を味わったのです。今振り返れば、それは現実の現場を知る医師の当然の反応だったのかもしれません。けれど、当時の私はただただショックで、「こんなに伝わらないなら、自分が医者になったほうが早いんじゃないか?」という思いが一気に強まりました。そうして、「医学部へ行こう!」という気持ちが一気に現実味を帯びてきたのです。

思い立った瞬間、「なんでこんなこと考えちゃうんだろう、私ったら」と、自分で自分にツッコミたくなりました。会社を辞めて大学院に進んだだけでも“王道”から外れているのに、28歳でまた医学部!?当時の私は、「三十路」という言葉をネガティブに捉えていたこともあり、どう考えても自分の人生は道から外れまくっていると感じていました。でも、湧き上がった情熱を止めることができず、28歳で富山大学医学部3年生に編入。周囲の同級生は20~21歳。最初は「こんなに若い人たちとうまくやっていけるのだろうか」と不安にもなりましたが、実際に教室に入ってみると、全く問題ありませんでした。今思えば、ほんの数年の差。でも、当時の私にはその差がとても大きく感じられていたのです。

医大の研修でオーストラリアに2度目の留学、帰国後は産婦人科医に

医学部6年生の夏には、2度目の留学として、オーストラリア・メルボルンの病院で1か月間の臨床研修を経験しました。医療現場を間近で見ることができたのはもちろんですが、それ以上に大きかったのは、「自分自身のあり方」を見つめ直す機会になったことです。現地の医師から「もっと自分の意見を主張していい。控えめすぎるよ」と言われたとき、私はハッとしました。アメリカ留学中には自然に身につけていた“自分の考えを伝える力”が、日本での生活の中で少しずつ薄れていたのです。その時、「自分が窮屈に感じるなら、外へ出ればいい。今ないものは、自分でつくればいい」と思いました。

帰国後は産婦人科医として経験を重ね、医師7年目には、東京で外国語対応のクリニックに勤務。多言語での診療を求めて遠くは沖縄やロシアからも患者さんが訪れたことから、ニーズの大きさを改めて実感しました。自分がかつて経験した「外国で暮らすことの難しさ」を思い出しながら、様々な国の方々の異なるニーズに応えていくことは、自分自身の柔軟性をさらに磨く良い機会になりました。

「病院の中」から「社会の中」へ ― 医師としての更なる挑戦

その後、24時間体制で分娩に立ち会う忙しい日々を経て、「この働き方を一生は続けられない」と思うようになりました。2年前に退職し、その後は外来パートの傍らで、外資系テック企業での派遣勤務、ベンチャー企業の医療顧問などにも挑戦しました。医療の世界から少し離れたことで、「医療しか知らなかった自分の視野が、思っていた以上に狭くなっていた」と気づきました。

そして、2024年11月。弟と共に兵庫県に婦人科クリニックを開院しました。小さくていいから、既存の医療制度に挑戦するクリニックにしよう、というビジョンを掲げて。新しい場所をつくる過程は決して容易ではありませんでしたが、これまでの全ての経験がつながっていると実感できました。

私は現在は、クリニックの運営や外来診療に加えて、企業の医療顧問も継続しています。ときどき、個人的なつながりを通じて企業の社員向けに講演を依頼されたり、医療系の事業を展開している方々のご相談に乗ったりすることもあります。医師としての経験を、医療現場だけでなく、社会のさまざまな場所に還元できることにやりがいを感じています。医師は病院の中にいるだけではなく、もっと多様なかたちで社会に貢献できる存在なのだと、強く思っています。

留学を考えている方へのメッセージ

今回、自分自身の半生を振り返るチャンスをいただき、改めてこう感じています。遠回りに見える選択も、すべて意味がある。2度の留学は、それを私に教えてくれました。19歳の留学が「外の世界」を知る原点となり、31歳の留学が「自分の軸」を取り戻す時間となったのです。「どうしてそんなに方向転換できたの?」と驚かれることもありますが、私にとっては自然な流れでした。たくさん遠回りをしているようで、実はすべてがつながっていると感じています。

「その一歩が、人生を変える」— この言葉は、私自身が体験してきたことです。

もし今、この記事を読んでいるあなたや、あなたの大切な人が留学を迷っているのなら、こう伝えたいです。「完璧じゃなくても大丈夫。まずは一歩、踏み出してみてください。その一歩が、あなたの人生を大きく変えるかもしれません。」と。

錢さんにお会いされたい方はこちらまで: 芦屋ウィメンズクリニック


産婦人科医としてご活躍される現在の錢さん


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大切な子どもに残してあげられることは何でしょうか。たとえお金や物がなくなったとしても、教育を受けたことによる目に見えない「経験」は、貴重な財産としてその子の人生を豊かに彩る礎となるに違いありません。
グローバル時代と言われて久しい昨今、子どもの教育・経験を考える時に「海外留学」も選択肢のひとつとして当たり前になってきました。少なくとも、子どもがそれを望んだ場合には、保護者は耳を傾け、機会を与えてあげてほしいと願います。

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