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【異国での学びが与えた影響】 第5回: “終わり”ではなく“過程”を楽しむ人生 (五月女仁香さん)

「留学」は人生の中で大きなアドベンチャーであり、日本では味わえない体験を通して、自分自身を深く見つめる絶好の機会です。留学中に気づく自身の変化、また留学を終え社会に出た時に「留学体験」が自分に何をもたらしたか?を実感する時が多々あります。

「異国で生活すること」「異国で学んだこと」が自分をどう変えたか?その後の人生にどう影響を与えているか?EDICMのOB/OGや知人が留学を振り返り、その体験が「現在の自分」をどう形作っているのか?

シリーズ第4回は、EDICMからアメリカのボーディングスクール、Fountain Valley School of Coloradoに留学した五月女仁香さんをご紹介いたします。


入院中に留学生活を振り返る


大自然の中のFountain Valley School of Colorado

大自然の中のFountain Valley School of Colorado

先日、出血性急性腸炎にかかり、一週間入院することになった。発症したその日は会社のチーム合宿で箱根にいたのだけれど、タクシーで東京のかかりつけの病院までかっ飛ばしてもらうことになった。タクシーの中で唸る私に、運転手さんは自分が通っているお茶の水の歯医者の話をし続けていた。そのボールを返す余裕もなく、そのまま入院。幸い、入院に必要なものが抱えていたボストンバッグ一つにちょうど全部揃っていた。

人生初めての入院生活で、最初の5日間は絶食。食事が大好きな私にとってこれは苦痛だったけれど、奇妙なことに入院そのものに対してはほとんどマイナスな感情を抱かなかった。むしろ、普段なかなか絵を描いたり文章を書いたりできない時間を、病院という特別な場所で過ごすのは、ある意味楽しみだった。全国で100人ほどしかかからない菌に自分が感染したことに、「これって、なんてユニークな体験なんだろう」と、少しワクワクさえしていた。

病院の廊下を点滴スタンドを転がしながらウォーキングしているとき、この記事を依頼されたことを考えていて、「異国で学びが与えた影響」というテーマを考えてみると、私にとってそれは、絶食の時間に逆に「今、できること」を楽しむ方法を見つけることだった。食事がない代わりに、普段は忙しくて見逃していた自分の気持ちや、病室の静けさを前向きに感じることができるマインドセットだと思った。


“途中”を楽しんだ留学中の日々


卒業10周年イベントでのクラス写真(2025年5月)

卒業10周年イベントでのクラス写真(2025年5月)

私が留学していたのは、アメリカ・コロラド州のボーディングスクール。高校時代、放課後にはスイミング、バレーボール、サッカー、ラクロスを選んだが、そのうちスイミング以外は全て初めてのスポーツだった。日本の学校では部活を一つ選び、それを三年間やり続けるのが一般的だったため、「何か一つを極めることが大事だ」と考えていた。

けれど、留学先では、その考え方が必ずしも正しいわけではないと気づいた。スポーツのコーチたちは、すべて素晴らしいアスリートでありながら、同時に多様な顔を持っていた。例えば、水泳のコーチは優れたスイマーでありながら、生物の先生であり、マウンテンバイカーでもあり、パンを焼くのが得意でもあった。バレーボールのコーチも、素晴らしい選手であり、英文学の先生であり、音楽家であり、二児の母でもあった。

彼らのように多彩な人物を生み出す環境に身を置く中で、私は「一つのことに専念すること」が必ずしも正解ではないと感じるようになった。それよりも、いろんなことに挑戦して楽しむこと、その中で得られる楽しさや豊かさに目を向ける方が重要だと思うようになった。
この経験から、あえて能力的に言うと、私は「途中を楽しむ力」を少しずつ身につけていったのだと思う。今日、私は昼間エンジニアとして働き、朝はランニングやキックボクシングをし、毎日執筆や絵を描いたりしている。週末にはフルマラソンにも挑戦しているが、どの活動も、ゴールに向かう過程で感じる楽しさや充実感こそが一番大事だと感じるようになった。ゴールに向かって進みながら、その過程で得られるエネルギーや学びが、人生を豊かにしてくれることを実感している。


新鮮な気持ちで迎える毎日へ


五月女さんが搬送時のタクシーの中で(病院で描いたスケッチ)

五月女さんが搬送時のタクシーの中で(病院で描いたスケッチ)

仕事においても、サイドプロジェクトにおいても、さらには人間関係においても、つい「終わり」を目指して、何かを完成させたり、成功させたり、終わらせたりしようとしてしまう。しかし、実際に大切なのは、その過程にこそエネルギーがあるということを忘れたくない。まだ完成していない、形が整っていないその段階にこそ、色があり、エネルギーが宿っている。その瞬間こそが、私たちが感じる充実感を生み出すのだということを知っておきたい。

「完了」が目の前に迫っていると、その後のすべてが時にただの形式に感じられてしまう。でも、途中の過程こそが、何か特別なものを生み出す場所だということ。そう言えば、最近カフェでドーナツを頼んだときも、同じような感覚を味わった。その最初のひと口は、甘くて柔らかくて、温かくて、それだけで少し気持ちが軽くなる。でも、三口目を食べたあたりで、ドーナツはもはや完璧な円ではなくなり、穴の位置が少しずれてきて、まるできちんとした「O」から不均一な「C」へと変わる。ドーナツの穴が崩れるその瞬間、ドーナツが「C」になる前と後ではドーナツを食べることへの期待感が変わってしまう。それに気づける心の余裕を持っていたい。

この記事を書いている今、点滴が外れ、いつでも好きなときにシャワーを浴びられるようになり、点滴を受けるほど具合が悪かった記憶が、両腕にわずかな注射の跡として残っている。病院でのあの一週間も、退院後の一週間も、10年前の留学先での一週間も、そして10年後のこれからの一週間も、どれも新鮮な気持ちで迎えたいと思えるのは、留学経験のおかげだと感じている。

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大切な子どもに残してあげられることは何でしょうか。たとえお金や物がなくなったとしても、教育を受けたことによる目に見えない「経験」は、貴重な財産としてその子の人生を豊かに彩る礎となるに違いありません。
グローバル時代と言われて久しい昨今、子どもの教育・経験を考える時に「海外留学」も選択肢のひとつとして当たり前になってきました。少なくとも、子どもがそれを望んだ場合には、保護者は耳を傾け、機会を与えてあげてほしいと願います。

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