世界を舞台に活躍する医師を目指して~英国ボーディングスクールからチェコの医学部へ~
海外の高校卒業後の進路は、学んだ国の教育システムや卒業資格に左右されるものの、基本的には世界中の高等教育機関(四年制大学、短期大学、高等職業専門学校等)への出願が可能となり、多岐にわたります。
先日、TASIS England(The American School in England)を卒業後、チェコ国立大学医学部(国立カレル大学医学部)へ進学したH.S.さんが夏休みの一時帰国中にオフィスへ来てくれました。9月から同大学の4年生として再び学びを迎えるH.S.さんにお話を聞きました。
今、医学部の履修期間の前半(最初の3年間)を終えたところですね?
3年生の学年末に行われた病理解剖学と病体生理学の試験が最難関で、かなりの時間をかけて勉強しました。本来は試験を7月末に受け帰国する心づもりでしたが、病理解剖学の試験準備に時間を要し、自ら試験日の変更を願い出て8月4日に受験しました。
230種類のトピックのなかから3問が出題され、全て口頭試問形式です。ひとつのトピックに30~40分を要し、やりとりの内容が深くなっていくので、付け焼刃では全く太刀打ちできません。この試験を無事合格することができ、本当にほっとしています。
4年生以降はどのようなカリキュラムになるのですか?

チェコ国立大学(国立カレル大学)のキャンパス
カレル大学はブロック制を採用しているので、内科、外科、精神科、皮膚科、産科等、複数の診療科を順番に回りながら、実践的な学習を継続します。今は特に産科と総合診療内科に興味を持っています。日本でも来月(2025年9月)に都立の医療センターと私立病院を見学させて頂けることになっています。そして2026年の夏は、日本で内科と外科で2週間ずつ実習を行う予定です。
大学や病院でのコミュニケーションの言語は英語ですか?
大学の講義は英語です。しかし、医学生が実習の一環として、2名一組で患者さんに問診を行うこともあります。その場合はチェコ語を使用します。私のような外国人が話すチェコ語で患者さんが不安にならないよう精一杯頑張っていますが、それでもスムーズなやりとりがはかれない時は申し訳ない気持ちになります。
日本でも海外でも医学部の学習は精神的にも大きな負荷がかかると聞いています。その辺りはどのように気持ちを保っているのでしょうか?

高校および大学の友人とドイツにて
3年生までの学習を終えた今、今後は実習が多くなるので、ひとつひとつのケースを大切にしなければ、と思っているところです。私の学年は1年次に90名が入学しましたが、現在は30名程しかいません。
1年生から2年生への進級時に多くの同級生が何らかの理由で大学を離れました。ですので、現在の同級生は様々な国籍の出身者ですが、とても親しい関係を築いています。最も気が合う友人はドイツ出身のSで、よく一緒に買い物に行き、お互いに色々な相談をし、悩みを共有しています。
卒業後の進路の希望は?
カレル大学医学部を卒業することにより、EUの医師免許は取得できますので、併せて 日本の医師免許も取得する予定です。また5年生、6年生ではヨーロッパの病院でも実習を、特に産科のレベルが高いと言われているデンマークにも行きたいと考えています。臨床医として働くのであれば、14歳の時から海外へ出ていることもあり、まずは日本の病院でスタートを切りたいと考えています。
海外の大学で医学を学び、日本の医師免許を取得できるプログラムが複数ある
H.S.さんと初めてお会いしたのは、彼女が小学校4年生になったばかりの頃でした。その年の夏にイギリスのサマースクールに行きたい!とご両親と一緒にオフィスへ来て下さったこと、数回のサマースクールへの参加、その後の中高校留学時代の様々なことが走馬灯のごとく蘇ります。
一昔前、医学部を目指す場合は、中高校時代の海外留学は1年程度とし、日本の高校卒業資格を得て、(日本の)大学の医学部へ進む、というのが定番でした。しかし、現在はチェコ国立大学(国立カレル大学)のように海外の大学で学びながらも、日本の医師免許が取得できるプログラムが複数あります。また国際医療福祉大学(千葉県成田市)のように英語で授業を行う医学部も創設されています。海外での学びをどのような方向で活かすかは、学生次第ということを改めて実感します。